【森ビル株式会社様】Octa Roboticsのロボット・建物設備間連携に特化したインターフェース「LCI」を導入・検証

  • 森ビル株式会社様
  • デベロッパー
  • 1,000名~

山本未生様
管理事業部 事業企画部

加納初様
管理事業部 事業企画部

西田奈央様
管理事業部 事業企画部

1台のロボットが稼働するエリアを広げれば、費用対効果は上がると感じます

株式会社Octa Roboticsが開発した、サービスロボットが建物設備と連携し、ロボット単体での移動を可能にするインターフェース「LCI」。森ビル株式会社様では、清掃や警備業務を担うサービスロボットとエレベーターを連携させるシステムとして「大規模複合施設」のオフィスエリアにおいて、LCIサービスを導入・検証されました。

森ビル株式会社様の事業領域は、開発・設計など都市の計画段階から、不動産賃貸・管理、タウンマネジメント、文化芸術事業など都市の運営段階まで、「都市を創り、都市を育む」さまざまな側面から成り立っています。本インタビューでは、LCIサービス導入・検証の経緯や目的、導入で得たものなどについて管理事業部 事業企画部の山本様・加納様・西田様に話を伺いました。


「品質向上」と「コストの合理化」を目標にLCIサービスを導入・検証

Q.まずは、「大規模複合施設」のオフィスエリアでサービスロボット・LCIサービスの導入・検証を行った経緯を教えてください。

山本様
我々は建物の管理をする中で「品質向上」と「業務の合理化・効率化」を目標にしています。コスト管理をしながら品質の高いサービスを提供する、その1つの解決策としてサービスロボットに注目しています。

また、六本木ヒルズができた2003年当時からサービスロボットの導入はしていましたので、その進化にも興味を持っていました。我々の仕事はディベロッパーであり、貸主であり、日々の運営を担う管理会社でもあります。そのため施設内に入られているテナントの皆様に品質の高いサービスを提供する方法を模索する中で、サービスロボットやLCIサービスの導入・検証に踏み切ったという流れです。

Q.御社の規模感であれば、清掃や警備業務を委託されていると存じますが、将来性を見越しサービスロボットを導入したということですね。サービスロボットの活用で期待した点は、業務の品質向上でしょうか?それとも人件費のコストダウンなのでしょうか?

加納様
両面ありますが、最近の業界の傾向としてはコストメリットも大きな要因です。清掃や警備の人件費が圧迫しているというよりは、将来的な労働人口の減少によるコストの上昇を意識しています。清掃や警備は比較的高年齢層の方が多い業務ですので、人手不足のダメージが出やすい部分ではないかと思います。この点で、サービスロボットの導入が選択肢に加わることは有益だと感じました。

西田様
実際に運用してみると、ロボットが1人分の業務をすべて代替できるのは難しいため、「ロボットを導入したから人件費がすぐに減る」というわけではないことが分かったところです。

Q.サービスロボットの機能性は以前よりも向上されてきておりますので、さらに導入コストのハードルが下がれば御社が求める合理化にも一層近づくかと思います。コストに対する期待感がある中で、弊社のLCIサービスを導入したポイントはどこだったのでしょうか?

山本様
注目したのは、メーカーを問わず複数のサービスロボットが連携できることです。我々は様々な業務の目的に応じて複数のロボットを使い分けたいという理由から、連携できるロボットが限定される仕組みは使えません。メーカーを問わないシステムを提供していたのは、Octaさんしかいませんでした。

加納様
サービスロボットもそうですが、LCIサービスであれば、エレベーター側のメーカーも問わない点も良いところですね。大きな物件になると、導入するエレベーターのメーカーが複数となるケースもありますので、汎用性の高さはメリットだと思います。

Q.サービスロボットの共通項は自由に動けることですので、費用対効果を追求すると「1台のロボットが稼働できるエリアの広さ」も重要な要素ではないでしょうか?

加納様
まずはロボットがしっかりと品質の高い作業ができることが前提ですが、1台のロボットが稼働できるエリアを広げれば、ロボット運用の効率、および費用対効果は上がると感じます。導入・検証前のヒアリングでは、「空港のような広い場所でないと費用対効果が上がらない」との声もありましたが、LCIサービスでサービスロボットの縦動線(エレベーター連携)を確保できれば、ビルでも費用対効果が上がると思います。今後サービスロボットの稼働エリアを広げるのであれば、エレベーターやセキュリティシステムとの連携は必要不可欠です。

西田様
高層ビルにはエレベーターが設置されていますので、費用対効果を上げるならまずは縦動線の確保が必須ですね。現状では、人の手を介して移動するサービスロボットが多いと思いますので、今後は縦と横の移動の障壁をクリアし、自律することが求められるのではないでしょうか。


「大規模複合施設」のオフィスエリアでの導入・検証で得られた成果と課題

Q.今回のサービスロボット・LCIサービスの導入・検証で期待値との差はありましたか?

西田様
私自身、サービスロボットに触れたのが初めてでしたので、ロボットが自律的に業務をこなすことにまず感心しました。

決まった業務に関しては一定の品質が保てることや、人が前方を通過した際は停止するなど、安全性が確保されていることも今回の導入・検証で分かったことです。一方で、サービスロボットを導入したからといって、すぐに人の手が不要になるわけではないことは期待値との差といえるかもしれませんね。
山本様
西田の言うように、コストの面では期待値との差はありましたが、この問題をすぐに解消することは難しいのではないでしょうか。エラーが一切なくサービスロボットが動けば可能性はあるかもしれませんが、導入・検証でも人の介入が必要になることは何度かありました。一方で、サービスロボットの進化を見ていると今後はさらに性能も上がると思えますし、我々もより良い使い方を求めていくことでその差は縮まっていくとも感じています。

Q.安全性の面から、人とサービスロボットをいかに共存させていくかはよく議論されるのですが、ロボットが勝手にエレベーターに乗る点で不安などはありませんでしたか?また、御社は実際にサービスロボットとエレベーターを連携させて、業務を行われたかと思います。そのときに気づいた課題や想定と違った点などがあれば、ぜひ教えてください。

山本様
その点でお話すれば、第一は安全面です。その次は「サービスロボットを乗せるために、ビルの利用者の方々に不便をかけないような運用を考える」というところですね。安全面を考慮して人とサービスロボットは一緒に乗らない、とされていますので、我々もサービスロボットがエレベーターに乗る際は、人は同乗しない仕組みを作りました。ただビルによっては、人とサービスロボットを分ける仕組みの構築が難しいケースもあるため、これらの乗車ルールは今後の課題ではないでしょうか。また、本格的に導入するとなれば、お客様への乗車ルールの周知も必要だと思います。

Q.おっしゃる通り、人とサービスロボットの共存は課題になると思います。すべてロボットファーストにする必要はありませんが、意識する環境作りは必要ですね。また、交通ルールのように、運行ルール作りは弊社でも意識しているところです。

山本様
我々も導入・検証に際して、運行ルールを設けました。例えば、導入当初はサービスロボットがエレベーター前で待つような設定にしていましたが、人の乗り降りを妨げていたため少し離れたところで待つように運行ルールを変更しています。こうした、運用に関する具体的な方法を知れたことは、導入・検証の成果といえます。


人にもロボットにも優しい環境へ、選べるルール作りに期待

Q.弊社では「ロボットを当たり前のインフラにしよう」をコンセプトに掲げ、ロボットの障壁を取り払い、LCIサービスを利用する皆様のメリットを最大化したいと考えています。今後は、運用に関するインフラ作りにも力を入れたいと考えていますが、その上で期待されることはありますか?

山本様
将来的なイメージですが、サービスロボット全体を管理・制御するプラットフォームのようなシステムがあると便利だと思います。今後は、1つの建物に多様な業務を行うサービスロボットが働き、台数も増えることが考えられるでしょう。すると、お互いに干渉しあう可能性があるかもしれません。こうしたときに、サービスロボットの居場所や作動状況を把握するロボットやシステムがあれば、より活用が進むのではないでしょうか。

Q.貴重なご意見ありがとうございます。弊社はサービスロボットの標準化、ルール作りにも携わっています。「サービスロボットが自由に動き回る世界観」というのは、我々がまだ見ぬ世界。そのため、標準化のルールが必要だと考えています。この点からLCIサービスを導入・検証された御社が期待されることはありますか?

加納様
「セキュリティラインの担保」は、明確なルールが必要になるかもしれません。今回の導入・検証は限られたフロア数で使用したため問題になっていませんが、ビルではエレベーターもセキュリティの1つとなる事もあります。「サービスロボットと同乗したらセキュリティが通過できてしまう」といったことがあれば、不安に思う入居者様も少なからずいると思います。セキュリティ対策がさらに強化されれば、導入のハードルが下がりやすいのではないでしょうか。

山本様
ロボットを導入するビルの用途や形状によって、要求される水準は変わってくると思いますので、「選べるルール作り」もお願いできたらと思います。基本ルールはありつつも、オプションで自社にフィットしたルールが作れると良いですね。導入する側としては、やはり安全面や機能などを自分たちで選べたほうが便利です。単純なルールではなく、Octaさんに蓄積されているノウハウなどを活かしたルールを、共通して使っていける未来だと我々もありがたいです。

Q.弊社もさまざまな企業と運用実験をしながら、ノウハウを蓄積しています。今後は、導入される企業様にも共有しながら標準化を進めていきたいところです。

西田様
私たちはロボットに対する知見がまだ深くないため、サービスロボットを運用する上で分からないことも出てきます。運用する際に必要なルールが、今後標準化されていけばありがたいですね。その上で、自社にフィットするルールを考えていきたいです。

加納様
ちなみに、サービスロボットは子どもたちにも人気です。ロボットがいると子どもたちがたくさん集まって来てくれますので、ロボットは前に進めなくなるという(笑)

山本様
子どもたちはもちろん、幅広い世代の方が興味を持ってくれていると感じますね。我々もOctaさんが蓄積されたノウハウを共有させていただきながら進めていけたらと思います。

-人にもロボットにも優しい環境を目指し、弊社もさらに尽力していきます。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。